ビール

 こちらに来て3、4日目のことであった。立ち寄った7・11でビールを買った。日本と比較すると安い。レジでは、IDを見せろといわれた。コンビニでものを買うのに身分を証明する必要がある訳ないだろうと思ったら、21才以上、つまり酒を飲んでも良い年齢であることを証明するものを提示せよとのことであった。
 同じ様なことは以前Hawaiiに行ったときにもあった。当時は確か25才位であったから、若く見られて、どこかしら悪くない気分もあった。一緒にいた同僚の幅崎さんの奥さんなどはにこにこである。その時にはパスポートを持っていたので、それを見せて買うことが出来た。
 しかし、あれから5年位経った今又IDを見せろと言われるとはいやはやである。先ず大学のIDを見せ、これでは駄目かと聞いてみる。これには年齢が明記されていないので駄目だという。大学のIDにはADMIN PROF STAFFと明記されているのだから21才を下回る訳ないだろうと思うし、キャッシュカードを見せればdebut cardではないんだから収入のあることを証明出来そうなものなのだが、年齢が明記されていないと駄目だと四角四面で取り合ってくれない。そういやあバッグの中にパスポートが入っていたということを思いだし、それを見せて漸く買うことが出来た。なんともはやだ。
 私も今や30才。若くみられるのも悪くはないが、未成年にまで見られると、なめられている様でちょっと癪でもある。そんな訳で、その後3、4日は髭を剃らず、少しは老けて見えるようにしようとしたが、なんだかうっとおしくなって剃ってしまった。
 アジア人の年齢はアメリカ人には分かりにくく、若く見えるのであろう。スーパーでたまたま出会ったホンダ関連会社に勤める人の知り合いは、36才であるにもかかわらず、酒を買っては聞かれ、たばこを買っては聞かれするそうである。アジア人だけでなく、アメリカ人でさえそのようなことはあるそうで、隣に住む兄ちゃんは23才なのであるが、よく聞かれるそうである。まあ実際若いのだからさほど驚くほどではないかもしれないが。ひどいときには映画館でも聞かれるという。どうも映画館は18才以上でないと一人では駄目と言っていたような。(そういう指定の映画だったのかな?)
 酒を買うのにIDを見せろと言われたのはその他何回かあり、大体50%位の確率で聞かれている。一回、車の中にパスポートを置いたままにしており、年齢を証明するものを何も持たずにいる時に聞かれたことがあった。その時には説得してなんとか買うことが出来た。
 現在はOhio州の運転免許を持っており、これには生年月日も明記されているので酒を買うのには重宝している。年齢を証明するものといったら、この他にはパスポート位しかないけど、いちいち酒を買うのにパスポートなんて出したくないものね。
 さて、それ程頻繁にビールを買いにいくのかというとそれ程でもない。しかし、こちらに到着後一週間程笠井さん宅に居候していた時、また、一ヵ月程、現在一人で住んでいる家に奥野先生と同居していた時には毎晩に近く飲んでいた。6月の遅い日暮れ時に、ドアの外の軒下でビールを飲んで一服するというのはなんとも優雅でくつろげるので、まるで日課のようにしていた。同居中室内禁煙であったのもその原因である。
 この軒下での一時は、実に何とも優雅である。閑静な住宅地ならではの楽しみであろう。隣の兄ちゃん夫婦やおばちゃんと居合わせればちょっとした会話もするし、また、ここら辺の住人と思われる人達と軽い挨拶を交すのも又良い。軒下は格好の夕涼みの場所である。こちらでlightning bugというところの蛍なども風情がある。こちらの蛍、日本のに比べると小さいようである。光りも緑色に見えることもあれば、赤っぽく見えることもある。最近は、日が暮れると蚊がわんさか活動しだし、落ち着いてくつろげなくなるので、いま一つその頻度は減りがちではあるが。
(July 6, 1997)

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