秋のハイキング

 99年11月も下旬になろうという頃、パトリックとハイキングに出かけた。秋の紅葉など見に行くのもまたよいではないか。その前の年のその頃も、ハンスなどと同様にハイキングにでも行こうという計画を立てたりしていたのだが、週末毎に天気が悪く、結局行かずじまいに終わっている。
 紅葉を見るのにもそろそろ寒くなってきたし、だいぶ葉も落ちてしまったのではないかなと心配ではあったが、行ってみることに。ここオハイオ州は平坦で、これといった山がない。紅葉見に行くなら、どうせなら山がいいのだが、ぱっとした山がないので仕方ない。アルプスの国、スイス人のパトリックも、どうせなら山に行きたいと思っていたのではないだろうか。日本もちょっと行けば山に当たる国であるので、日本人の私もどうせなら山に行きたい。その帰りに温泉にでも寄れたら文句なしなところではあるが、それは無いものねだりというものか。
 結局、それほど遠くに行こうという程でもなく、近場のハイキングの出来るところに行く事にした。パトリックが隣の研究室の教授にオハイオ州内のハイキングコースのガイドブックで、適当なところを選ぶ。近場とはいえ、高速道路で行くので、まあまあ選択肢はある。
 当日、適当に午前中出発。ハイキングの前にちょっと食事と思って入ったレストランではビュッフェ形式で食べ放題であったので、予定外にたらふく食べてしまった。重い腹を抱えてハイキングもないものだが、急な坂のある山に登ろうと言うのでもないので、まあよい腹ごなしではある。
 散策路の入り口に車を停めて、いよいよハイキングに。もう11月で冬に差し掛かろうかと言う頃なのでちょっと寒いが、有難いことに紅葉はまだ残っており、なかなか気分はよい。コースは、ちょっとした湖の外周を一回りするものであった。水辺の紅葉の中を歩く、なかなか眺めも良いコースで、急な坂が有る訳でもないので、軽装でデートするのにも良さそうな風情だが、一緒に歩いているのは悲しいかな大柄なスイス人男性である。まあ彼もどうせ同様に感じたであろうからお互い様だ。
 一回りすると、そんなに長いコースでもなかったので、日は短くなりつつあるとはいえ、まだ日暮れまでには時間があるので、その近くの別の所へ。ビーチがあると地図にあるので、そこに行ってみることにした。ビーチといっても勿論海のではなく、湖のである。行って見ると土地に余裕のあるせいか、駐車場の規模がやたらと大きい。ビーチの規模はさほどでもない。この駐車場に車が満杯になる程客がやって来たら、芋洗い状態になる事必至かと思われたが、もう秋も終わりでとても泳ごうとする人がいる訳でなく閑散としており、浜に鳥が多数いる他は我々二人だけであった。なにやら大型の猫科のものらしき足跡を見かけたがあれは何だったのだろう。
 その後、もう少し時間が有りそうなので、又、帰りがけに別の所に寄ることにしたのだが、その途中、大きな鹿を目撃した。写真をとりたかったが、その鹿はその巨体の割に軽々と飛び跳ねながら消えてしまった。
 この日最後に立ち寄った場所は、ダムの様なところで、その頃にはもう日暮れ時。水面に映る夕日の風情がなかなか美しかったが、秋の日の夕暮れはなんだかもの寂しいものである。
 そして市内に帰って来てから一緒に夕食を。ローストビーフを私は注文したが、なんだかパサパサの鰹のなまり節に似た様なのが皿にテンコ盛りに出て来た。ハイキングしてそれなりにお腹は空いていたものの、平らげた頃には満腹もいいところであった。おまけにテレビで見ていたオハイオ州立大のフットボールの試合は負け試合。せっかくきれいな風景眺めてきたのだから、ちょっと洒落た食事ででもその日をまとめたら良かったかな、なんて思った次第であった。

(April 18, 1999)

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