独立記念日

 7月4日はアメリカの独立記念日である。祝日となっている。前日にはdown townの方でパレードがあったり、花火が打ち上げられたりすると言うので、それを見にいくことにした。一緒に行ったのは、日本人の笠井さん、ドイツ人のハンス、スイス人のパトリックといういつものメンバーと、パトリックの友達で、やはりスイス人のアレンの合計5人であった。いわゆる外人ばかりである。
 Down townというと、「治安」の章でも触れたとおり、ホームレスのおじさんに金くれと言われたりしたことがあったので、何となく印象が悪い。また、研究室の秘書のおばさんは、前夜祭を見に行くならお金やカメラは盗まれるから持って行かないほうがいい等といわれたものだから、更になんだか気が退けてくる。
 お金は研究室の机の中に隠し(研究室の中とはいえ盗まれる可能性もあるというから始末が悪い)、バス賃とその他飲み食い用の数ドルをポケットに。でも、せっかくの機会と思ったのでカメラは持って行くことにした。実はハンスもパトリックもカメラはもって行っていた。スイスのほうは知らないが、ドイツ人も旅行の際にはカメラを持たないと気が済まない国民だそうだ。西洋人でカメラを抱えている旅行者は大概ドイツ人と思ってよいほどだとか。まあ、男5人で行くのだし、大して危ないこともあるまいと出かける。実際、人がぞろぞろと歩いており人目があるので、物騒な事はなかった。すりなんかには注意しないとならないかもしれないが。
 夕方6時過ぎ頃大学を出てバスでdown townに向かった。やはり同様に前夜祭を祝おうという人でごった返していた。日本では建国記念日といってもお祭り気分にはならないが、日本でも何かお祝いをすればよいのにと思う。アメリカは建国からの歴史が短いから特に祝う気になるのだろうか。日本には、各地方に夏祭があるからよいのかな。
 Down townにつくとえらく混雑している。その中に混じってパレードを見物。高校のマーチングバンドとか、ホッケーチーム、野球チーム、子供のバトントアラーだとか、はたまた水道局やら配管業者のグループ、アイスクリームやコーラの会社などなど、地元にある万の団体が参加しているようである。動物園からは鷹やら蛇やらを従えての参加である。車の中には豹かなんかが乗っている。ミストマトなるお姉ちゃんもオープンカーで通っていく。ミスコーラだかアイスだかの一人は何故ミスに選ばれたのかというほど太っていた。糖分とりすぎの見本の様な感じであった。
 パレードには、独立戦争当時の兵隊の格好をした人達とかも混ざっており、いかにも独立記念日らしい。第二次世界大戦や朝鮮戦争に出兵したおじいさんたちもオープンカーで更新。ベトナム戦争で亡くなった人の名を連ねたボードを乗せた車も走っていく。
 パレードの締めくくりは消防車が何台も。大きな梯子車などは後ろの座席にもハンドルがあって後部を揺らしながら行進していく。大体8時でパレードは終了。その後屋台の前の名がい行列に加わって適当に食べ物を食べ、花火の開始を待つ。
 夏至から数日、日の入りはえらく遅いため、始まったのは10時を過ぎていた。座る場所もないくらい混んでおり、ずーっと立ちっぱなし。アメリカ人がこんな混雑に我慢できるとは思わなかった。何やら放送があって国家吹奏が流れる。エンジンの付いたパラグライダーのようなものが河の上を飛ぶ。国旗をなびかせ、発煙させながら舞うと、ひゅーひゅー歓声が上がる。そして漸く花火が始まった。概ね、日本の祭で見るような花火と似た様なものであった。時間は30分位と短いが、やんやの歓声。間近で見たのでなかなか迫力。でも日本の様な楽しみ方のほうが好みではある。花火も1時間半から2時間くらいは続くし。
 日本では団扇とビールか何かを持ってござの上にでも座って眺めるところであるが、どうもこちらでは公共のオープンスペースでアルコールを飲むのは御法度のようで、ビールを飲んでる人は見かけなかった。とはいえ、花火が終わって帰るときには、打ち捨てられたビールの空き瓶などを見かけたので、飲んでる人が全くいない訳でもなさそうだ。
 花火が終わると、山ほどいた人がぞろぞろと帰り出す。バスにはすぐに乗れそうもないので、近くのジャーマンビレッジまで歩いていき、帰りはタクシーでという事にする。ここColumbusにはドイツからの移民が多いらしく、ジャーマンビレッジなる一角がある。ドイツ料理の店などもあるらしい。暗かったので、様子はあまり分からなかった。
 その中にある酒場でビールを2杯ほど。ドイツビールではなく、Columbusという地ビールとBud Light。ずーっと立ちっぱなしだったので何だか眠くなった。そこでひとしきりだべった後、タクシーで大学まで帰った。大学では笠井さんとしばらくインターネットで日本国内の情報を見た後、深夜に御帰宅。
 翌日、独立記念日の夜も北のほうの公園で花火が上がっていたようであるが、窓からちらっと見て、その他はテレビで見るにとどまった。どうも小さい頃から、花火は見にいかないと損したような気分になるのだが、まあいいかと思っているうちに終わったようである。こちらの花火も日本の夏祭の様な風情があるので、まあまあ満足。日本の夏祭がちょっと懐かしく思われた。
(July 17, 1997)

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