ナイアガラ
6月14、15にナイアガラの滝を見物に行ってきた。自動車運転免許を取った翌日からである。こちらに住んでいる間に、是非一度は訪れようと思っていた所ではあるが、Ohio到着から一月を待たず実現するとは思っていなかった。My carでの初長距離ドライブである。
前日、ナンバープレートを手に入れていた。それまでは1ケ月だけ有効の一時的な紙で出来たナンバープレートを付けていたのだが、本物(という表現もなんだか妙ではあるが)を出かける前に付けてやっとそれらしくなった感じである。だいたいナンバープレートを付けて出発したのは9時頃であった。
ナイアガラの滝までは約600km。High wayを使えばほぼ6時間といったところである。笠井さんと一緒であったから、たいして長い距離でもない。実際、日本で住んでいる仙台から実家の水戸まで、やや混んだ6号を通れば同じくらいの時間がかかる。それを考えると、まあ大したこともない。ちょっと心配なのは、暑い日差しのなかを長時間飛ばしても車は大丈夫かなということであるが、94年のFord Aspire、まあ頑張ってくれるであろうと。
High wayからの眺めは、なんとも単調であった。森のようなところを切り開いて道を作ったのであろう、西部のような砂漠よりは眺めはよろしいとはいうものの、さっぱり景色が変わらない。植性などはいくぶんかは変わっているのかもしれないけれど、その手の知識がないものだから同じように見える。日本の様に山が遠くに見えることもなく、概ね平坦なものだから、どのくらい走っているのかも良く分からない。街もさっぱり見えない。それらしいのが見えたのは、Clevelandあたりと、Buffaroの中を通り抜けたときくらいである。
それ以外は延々と道が続くばかり。国土の余裕を感じた。道端には轢かれた動物が良く転がっている。狸やリス、あるいは鹿。鹿なんかにぶつかった日には車の方も大ダメージであろう。この旅行の後、スーパーの車用品の所を眺めたときには、動物避けの笛の様なものを見つけた。前のバンパーに取り付ける小さなものである。30mph以上のスピードで走ると、2種類の周波数の音が出て、それを嫌って動物が逃げてくれるというものらしい。効果の程は知らない。さすがに日本では見かけない製品である。
首を伸ばして、道路の対岸を見つめる亀も見かけた。渡るつもりなのだろうか。そのスピードからして、とても渡り切れるとは思い難い。その1万年の寿命もそこで尽きることになるだろう。ふんづけた車の方も事故を起こしかねない。ひょっとするとひっくり返った亀の様になるかもしれない。通りすぎた後では亀の運命がどうなったかは知る由もないが、ちょっと気にかかった。
さて、道路沿いには、轢かれた動物のほかバーストしたタイヤやら動けなくなって止まっている車も見かける。故障でもしたのか、単にガス欠か。日本の高速のようにそこら辺に緊急用の電話が備えられている訳でもないので、何かあったらどうするのだろう?たまーにはhigh way patrolの車が走っているので、それに発見されるのを待つのだろうか。そこそこに他の車が通る所はまだ良いが、殆ど車の通りが無いところなどはどうするのだろう。
すくなくともガス欠で動けなくなるのはご免なので、早め早めに給油する。ガスステーションの表示はまあまあ頻繁に見られた。日本の様に高速の中にガソリンスタンドや食事できるところがある訳ではない。High wayを降りてすぐの所にある。料金を払う訳でもないので、別に高速の中に建てる必要はないのだろう。全く料金を払う所が無い訳でなく、Buffaroのあたりから何箇所かあった。数ドルとか、50セントとか。50セント位ならわざわざ集めることもなさそうな気もするが。塵も積もればで、そのうち橋の建設費でも賄われるのであろうか。
エリー湖の近くで一旦high wayを降りて一休み。さすがに対岸は見えない。期待したような眺めでもなかった。そして、いよいよナイアガラへ。町の名前はNiagara Falls。そのまんまである。ナイアガラの滝はエリー湖とオンタリオ湖の中間。アメリカ側からカナダ側へと向かって注いでいる。河が二股に分かれており、アメリカ滝、カナダ滝の二つの滝を作っている。その間にある島はアメリカ領で、最初、その島にいく積もりであったが、ちょっと迷ったと思ったら国境の検問に入ってしまった。まあいいやでそこを抜ける。車のワイパーに何やら黄色い紙をはさまれて、それを持って検問の小屋へ。どこから来たかと聞かれ、日本から、目的は観光と答えた。どうも正確な表現ではないような気もするが、何のことはなく通過。
やった、外国だ、という訳で待望の滝見物。カナダ側に向かって滝は注いでいるので、眺めはカナダ側の方からの方が格別である。ところが、第一印象としては、実はちょっと思った程落差がないかな、と感じた。過剰な期待があったのだろうか。アメリカ滝のほうはまっすぐで、下のほうに岩が転がっており迫力としてはいま一つ。とはいっても華厳の滝よりはよほどでかい。良く紹介されるのは馬蹄形のカナダ滝で、こちらはなかなか。滝壷から立ち上る飛沫はまるで雲が沸き上がっているかのよう。近くで見るとかなりの迫力。いやー、来た甲斐があったなと喜んで眺める。
せっかくだからと滝壷の近くまで行くボートに乗り込む。その日最後の船にぎりぎり間に合う。青いビニールの河童を渡されそれを着る。近くで見る滝もまた格別。飛沫で虹が出来ていた。飛沫に気を使いながらも写真を撮ったあたりは日本人である。そういえば同じ船にも日本人の家族がいた。
ボートを降りてからは近くの土産物屋を眺めた。なんだか日本の観光地に有りがちな雰囲気。日本人観光客も多いので、そのせいもあるのかも知れない。メープルシロップ、カナダの国旗を買った。その後、滝を見下ろせるタワーに登り、夕食をとった。これまたなかなかの眺め。夜はライトアップされる。このタワーでも日本人の家族連れを見かけた。後ろの席にいるスキンヘッドの兄ちゃんが山本子鉄に似ているなどと、どうせ日本語は分かるまいと思って喋っていたら、なんと、その兄ちゃんも日本人だったのには参った。
そしてその日はカナダに一泊。ホテルまで歩く道々街を眺めたが、賑やかであった。観光地で人も多いためか、治安は良さそう。ホテルでは、日本人観光客が多いためか、部屋に備えてある案内書きや、通路の表示板にも日本語が使われている。英語、フランス語につづいて日本語というあたりが、いかに日本人観光客が多いかを物語っていよう。ホテル内の売店やフロントにも日本人が勤めていた。また、ホテルのテレビでは、NHKの衛星放送が見られた。日本のテレビは久しぶりである。のど自慢を見た。いやーなんかなつかしいと思ったら、それは、小さい頃以降日本にいても殆ど見ていなかったせいかも。こちらではあまり大きく取り扱われないような事件がニュースで大きく報道されているあたり、日本は平和なんだなと思った。小朝が参りました(?)という番組も見た。100歳を超えるようなお年寄が出演。さすが長寿国日本である。
翌朝は、滝を眺められる食堂で朝食を。日本食らしきものもあった。そしてチェックアウト。ホテル内の店のお姉ちゃんに聞いたところでは、日本人観光客は今は少ないがもう少しで多くなるとのこと。夏休みシーズンのことであろう。また、4月頃まで滝が凍っているところもみられ、それも又一興だとか。機会があれば、また来たいなと思った。
滝から15km程離れた景色が良いと言われた公園でオンタリオ湖を眺め、そして帰路につく。ガソリンが少なくなっていたが、カナダ国内はアメリカより高いと言うのでアメリカ再入国後と言う事にする。
アメリカ入国の検問所はちょうど高速の料金所の様な感じ。パスポートを見せる。何日間滞在したと聞かれ二日と答える。「目的は?」「観光」。「何か買ったか?」と聞かれ、「メープルシロップ!」と答えたあたりはなんだか間抜けである。どこに住んでいるかと聞かれColumbusと。同乗の笠井さんとは兄弟かという変な質問も。違うというとどこで知り合ったかと言うからOhio State Univ.でと答える。こういった幾つかの質問に車内から答えただけで無事入国。うわさでは、カナダには簡単に入れるが,アメリカに再入国するための書類がないために、一ヶ月ぐらいカナダに足止めをされた人がいるらしい、なんて話もあり、ちょっと心配していたのでほっとした。
帰りはPittsburgh経由。昼食はそこで食べた。そしてまたまだ明るいうちにColumbusに到着。無事旅を終えほっとする。また訪れても良いなと思う。眺めも楽しめたし、ちょとした外国旅行にもなったし。高速が只だし、ガソリン代も安いということもあって、宿泊費、食費その他お土産代(大したものは買ってないけど)も含め、$100ちょっとというお安い旅行であった。滝を眺めるボートに乗ったときの合羽は、今も記念として家の中にしまってある。
(July 15, 1997)
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