パスポートの書き換え(前編)
こちらオハイオに来て、10カ月程経った頃、パスポートを書き換えることとなった。実は、こちらに来る前から、滞在中にパスポートが切れることは分かっていたのだが、なんだか億劫でなかなか出かける気にならなかったのである。日本にいる間に書き換えてしまえばよかったのだが、パスポートを書き換えは、有効期間満了日の1年前からということで、ちょうどその頃は、Visaの申請やらで必要で、1週間かかる書き換えをする余裕がなかったのである。Visa申請の時の旅券番号と新しいのの番号が変わるのも気持ちが悪いと思ったが、これは古いパスポートも携帯していれば問題無いようなので、無駄に心配してしまった。
いっそのことパスポートを紛失しましたといって、有効期間満了日の1年前以前に再発行して貰うという手もあるなと企んだのだが、再発行は勿論してくれるが、有効期間満了日は紛失したものと変わらないということで、全く無意味なのでやめた。
さて、なぜこうも書き換えを億劫がっていたかといえば、日本国内なら、ちょいと県庁に出向けばすむのだが、国外では大使館とか総領事館に行かなければならないからであった。ここオハイオ州はデトロイトの総領事館の管轄なので、そこまで行かなければならない。わざわざ州外までドライブしないといけないのだから面倒である。しかもデトロイトはアメリカでも屈指の治安の悪いところと噂されているので、なんかやだなあという気持ちもあった。
そうは言っても、放っておく訳にも行かないので出かけることにした。ちょうど、こちらで知り合ったジュンゴさんという中国人が、日本で就職するためにVisaが必要で、同じくデトロイトに行かなければならないということだったので、都合が合えば一緒に行きましょうということにした。3月20日、ちょうど私のボスもジュンゴさんのボスも主張でいないということなので都合が良かったのだが、ジュンゴさんが必要な書類が、日本大使館から届くかどうか微妙なところだったので、もしかすると一人で行くことになるかなあとも思っていた。実はもうちょっと前に行こうという計画もあったのだが、その書類が届いていなかったので、一度延期になっていた。
一応、デトロイトまでの地図を手に入れようと思い、前日にAAAに出向いて地図を貰ってきた。会員ならば、どこそこへ行きたいというと、道のりの地図を只でくれるということを聞いていたので、これは是非利用しようということで行った訳である。確かに非常に便利。最適な道を教えてくれる。どういうシステムか知らないが、道順を示すコンパクトな地図を何枚か即座に束ねて出してくれた。I-75が近そうに見えるが、道路工事中の所があって別の道で行った方が早いとか、この辺は取締が厳しそうなんて情報も与えてくれる。全くもって便利である。もっとも、このAAAには、以前奥野先生と同居していた時に教えて貰った地図上の印を目当てに出かけたのだが、一つ前の通りに間違って印が付けられていたので、探すのに道を尋ねたりして、ちょっと苦労してしまった。こりゃ、AAAに行くまでにAAAが必要だな・・・と。
AAAで地図も手に入れたし、総領事館がダウンタウンとはちょっと離れたところにあり、そんなに道にも迷うこともなさそうだと分かって一安心。更に、前日、ジュンゴさんも行けることになったという知らせが入り、ちょっとほっとする。ナビゲーターしてもらった方が楽だし、ドライブも退屈しないで済む。
予定通りに金曜の朝に出発。ところで、このジュンゴさん、日本語はぺらぺらである。というのも、筆者と同じ仙台に住んでいたのだ。東北大で博士の学位を取った後、助手を勤めてからOSUのポスドクに来ているので、共通する所が多い。青葉山の工学部と片平の金属材料研究所の違いはあるものの、共通して知っている教授やら飲み屋やら、とにかく話しやすい。遠い異国で同じ所に住んでいた人に会えるのも奇遇である。もう寿司食いねえ状態である。自分より1年先に日本に行ってしまうのが惜しいところである。
そんな訳で車中では日本語で会話しつつデトロイトへ向かった。出発は朝早く。11時だか11時半までに着かないといけないので、一応余裕を見たつもりであった。結構順調に走れているように感じた為、途中朝食をややのんびり。ところが、実際距離は仙台−東京程もあるので、馬鹿には出来なかった。高速上は順調に進んでも、総領事館を見つけるのにちょっとは時間もかかるだろうし、これはもしかすると結構ぎりぎりになってしまうかな、と思ったのだが、実際余裕の無い時間帯に到着とあいなった。
総領事館はルネッサンスセンターというところの、大きなビルの確か13階だかにあるのだが、そこにたどり着くまでにちょっと探さなければならなかったし。まあ、総領事館が一軒の建物で、横に日章旗が翻っていて、駐車場に車を停めたら、すぐに入り口に入って、というのを期待していた訳でもないのだが、あんな大きなビルの中にあるとは思っていなかったのでちょいと驚いた。
そんなこんなでたどり着き、申請書を提出。さて、パスポートの書き換えで結構長くなってしまった。これについて書く位なら、もうちょっと書くべき話題もあるのではあるが。今回は長くなってしまったので、とりあえず区切りをつけて、続きは後編に譲ることにする。
(May 12, 1998)
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